大判例

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東京地方裁判所 事件番号不詳 命令

警視庁○警察署在監

被疑者 ○○○○

当○年

右の者に対する、暴力行為等処罰に関する法律違反、住居侵入公務執行妨害、傷害被疑事件につき、東京地方検察庁検察官渡辺次郎から被疑者の勾留の請求があつたので、当裁判官はこれについて次のとおり命令する。

主文

本件請求を却下する。

理由

本件請求にかかる被疑事実は、別紙のとおりである。

記録によれば、被疑者は国会構内において現行犯逮捕せられたものであつて、住居侵入の事実は、その疎明が十分であるが、進んで暴力行為の内容たる器物毀棄、あるいは公務執行妨害罪の罪を自ら実行し、あるいはこれを共謀したことを認めるに足る資料は全く存しない。門扉等の損壊、警察官に対する投石等が国会侵入の手段としてなされたことは明らかであり、被疑者の国会侵入がこれと接着した時期に行なわれたことはこれを認められるけれども、一方右犯行時間は約二時間にわたり侵入者数も千を以つて数える多数であつたこともうかがわれるのであるから、当時の異常な雰囲気を考えると、被疑者が学生間において、指導的地位にあつたことを認むべき資料の存しない以上、被疑者が前記犯罪を実行し、もしくは共謀したとすることは、単なる可能性の域を出でないものといわなければならない。およそ勾留は犯罪捜査の手段として認められるのではあるが、その自由を拘束することにより、被疑者に対し、精神的肉体的に多大の苦痛を与えるものであつて、殆ど短期自由刑を科するに等しいと考えられるのであるから、その原由たる犯罪の嫌疑は、具体的な資料に基き、客観的に認められるものでなければならない。刑事訴訟法第一条が公共の福祉の維持と、個人の基本的人権の保障とを全うしつつと謳つていることも、かかる趣旨をいうものと解せられるのである。すなわち本件被疑事実中、暴力行為等処罰に関する法律違反、公務執行妨害、傷害の各事実については、いずれもこれを認めることができない。また住居侵入については、被疑者もこれを自供しているのみならず傍証も確実であつて、罪証隠滅のおそれもないものと認められるうえ、被疑者が大学の学生であつて、下宿とはいえその住居も存在し、逃亡のおそれがあることを、うかがうに足りる資料もないのである。

以上綜合すれば、本件勾留請求はその理由がないことが明らかであるから、主文のとおり命令する。

(裁判官 富川秀秋)

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